ウォームアップを考える その2

2005/11/29

text/ M. Uchitani

 

 

 最近よく質問されるのが、「ブラジル体操を導入しようと思うのですが、ラクロスのウォームアップではどんなブラジル体操が良いのですか?」というものです。

ここ数年ラクロスではよくサッカーで行うような「ブラジル体操」をウォームアップの導入段階で行うのを目にしますが、どういった目的で行っているかがよくわかりません。
トレーニングや練習の方法、またウォームアップの方法などは様々な考え方があって何が正しい方法かは誰にもわかりません。それだけにそのチームを率いるコーチのフィロソフィー(哲学)が現れる部分ですが、何を目的に行っているかという部分が重要です。

ウォームアップで大事なことは、その後に行う練習や試合の「準備」を行うということです。野球でもサッカーでもバスケットボールでもなく「ラクロス」の準備をしなくてはなりません。ラクロスでよく使う部位やラクロスの特異的な動きに関する準備をすべきではないでしょうか?

また、十分に注意しなければならない点として、筋を伸ばす前には十分に筋温を上げておくべきだということです。身体が温まっていない状態で筋を急激に引き伸ばそうとすると逆に傷害を引き起こす原因にも繋がります。身体が十分に温まっていない状態で筋を反動を使い急激に引き伸ばそうとするような「ブラジル体操」などの動作は伸張反射(*1)を引き起こし十分な関節の可動域を獲得することはできません。ケガの予防という観点からみれば十分な関節の可動域を獲得したいものです。「ブラジル体操」自体が悪いのではなく、その内容とタイミングによっては不利益になりかねません。何度も言いますが我々が行うのはサッカーではなくラクロスだということです。

一方で、最近の研究でよく報告されているのが、「瞬発的な動きの多いスポーツの前に、静的なストレッチ(スタティックストレッチ)だけを行うことは、逆効果になることが少なくない」というものです。静的なストレッチは伸張反射を抑制し筋をリラックスさせます。その結果、可動域を獲得できるものの身体を眠った状態にしてしまう恐れがあるため、各関節をダイナミックに動かし実際の動きに近い動きを行う必要もあることが指摘されています。

以上のことからウォームアップではスタティックなストレッチなどにより十分な関節可動域を獲得するだけでは不十分であり、実際の動きに基づいたダイナミックなストレッチも必要になるでしょう。

*1:伸張反射
筋が急激に過度に引っ張られると、筋の中にある筋紡錘という感覚装置(レーダーのアンテナの役目)が働き、筋がそれ以上伸びて障害を起こさないように反射的にその筋を収縮させます。つまり筋の伸び過ぎによる障害を防止するための一種の生体防御機構で、これを“伸張反射”と呼びます。